2018.04.03
「差し歯」と聞くと、どんなイメージが浮かぶでしょうか。一言で差し歯と言っても、保険適用のものから保険外のものまで様々な種類があり、それぞれ特徴も異なります。では差し歯にはいったいどんな種類があるのでしょうか。
虫歯などが原因で根の治療を行った場合、土台を立てて被せ物を着ける必要があります。この被せ物がいわゆる「差し歯」です。この差し歯は保険適用のものと保険適用外のものがあり、保険適用の差し歯は金属が使われます。
前歯の差し歯の場合、表側は白いプラスチック素材、裏側は金属となります。見た目は白いですが、年数が経つにつれ白い部分がだんだん黄ばんで変色していき、金属を使用しているため、歯ぐきとの境目が黒ずんでしまい、審美的に問題が生じることが欠点と言えます。
奥歯は全て金属が使われ、一般的に「銀歯」と呼ばれている被せ物にです。口を開けたときに銀歯が見えることでコンプレックスを感じてしまうことがあり、審美的に問題があると言えます。また金属を使うことで金属アレルギーが心配されます。
一方、保険適用外の差し歯は素材が選べます。白い素材を使った差し歯は見た目がとても美しいだけでなく、体にも優しい素材です。この審美的に美しいセラミックの種類と特徴をご説明します。
セラミックという言葉を聞いたことがあるでしょうか。セラミックとは主に「陶器の素材」を意味します。このセラミックは白くて汚れが着きにくいことから歯科においても被せ物を作るときに使用されます。
そして全てがセラミックでできている差し歯はオールセラミックと呼ばれ、一部に金属を使用し、表面のみセラミックを使う被せ物と区別されます。
ジルコニアとは、人工ダイヤモンドとして有名です。ジルコニアは白くて美しく、強度に優れているため、主に奥歯の被せ物によく使われます。
ジルコニアの上にセラミックも重ねたジルコニアオールセラミックは、透明感のある白さによる審美性と耐久性に大変優れており、ご自身の歯に近い色調を再現することが可能であること、強度が強いため固いものをしっかり噛むことができることが大きな特徴です。
e.max(イーマックス)とは、Ivoclar Vivadent社から発売されているオールセラミックで、ニケイ酸リチウムという素材から作られています。審美性に優れ、強度も強いことが特徴です。
白く美しい差し歯を作製できますが、ジルコニアに比べると、強度はやや劣ります。そのためブリッジは難しく、部位やお口の中の状態により連冠で使用することが出来ない場合があります。
ステインあり
その名のとおり、全てがジルコニア素材から作られることから強度、耐久性に大変優れています。ジルコニアは真っ白なため、少し色付けする程度になり、使用する部位も主に奥歯になります。
ステインなし
オールジルコニアの中で最も安価になります。真っ白なままで色付けされないため、他の天然歯と並べると、少し不自然さが窺えてしまうかもしれません。そのため奥歯のみで使われることが多くなります。強度と耐久性は非常に強い素材です。
表面はセラミック素材、内側に金属を使ったメタルボンドはセラミックの被せ物として比較的有名で、歴史も長いため歯科医院でよく使われる自費治療のひとつです。
このメタルボンドは内側に金属を使うことで強度にはとても優れていますが、金属アレルギーの心配があること、また歯ぐきが下がってくると、歯と歯ぐきの境目に黒ずみが出てしまうことが欠点です。最近では金属アレルギーのことを考慮し、メタルボンドを取り扱わない歯科医院も増えてきています。あい歯科クリニックでも、基本的には取り扱っていません。
ハイブリットは表面にセラミックとプラスチックを使っています。プラスチックを含んでいるので、時間をかけて徐々に変色してしまう事からメタルボンドに比べて審美性が劣ります。
差し歯にオールセラミックが適している理由は、見た目の美しさだけではありません。金属の被せ物や詰め物の下で、再び虫歯になる可能性が非常に高いことが欠点として挙げられます。これを二次カリエスと呼びます。
この二次カリエスになる理由として、金属と歯の接着の弱さがあります。セメントと呼ばれる歯科用接着剤を硬化させることで、歯と金属をくっつけている状態なのです。これは接着とは言わず「合着」という状態であり、年数が経つにつれて徐々にセメントが溶け出します。
溶け出したセメントの隙間から虫歯菌が入り込み、内部で虫歯が広がってしまいます。保険治療の銀歯に最も多いトラブルで、再治療を繰り返すことが特徴です。
オールセラミックの特徴のひとつとして、歯との密着性が優れていることがあります。オールセラミックと歯は合着ではなく、ぴったりと接着されるため、金属に比べて隙間から虫歯菌が入り込むことが困難となります。
根の治療を行った歯に被せ物を被せるためには、歯の土台が必要になります。この土台には金属素材のメタルコアと、金属を使わないファイバーコアまたはレジンコアという土台があります。
メタルコアは強度が強すぎるため、強い力で噛むことにより歯の根が割れてしまう恐れがあります。また金属アレルギーも心配されます。ファイバーコアまたはレジンコアは、金属を使わず透過性が高いため、オールセラミックにはこちらが使われます。どちらもメタルフリーのため、体に優しい素材です。
差し歯の種類とそれぞれの特徴についてご説明しました。
オールセラミックは保険が適用となりませんが、保険治療にはない良さがたくさんあります。それは見た目の美しさだけではなく、金属を使わないことによる体への優しさ、そして歯との密着性という観点から見ても、とても優れた治療法です。
セラミックを使ったブリッジも治療が可能な場合があります。金属は避けたいけどセラミックはよくわからない、とお悩みの方は、是非セラミック治療の良さの参考にしてください。